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フランス人形

 最近、家の中が悲惨な状態、散らかり放題になってしまっていて
どんどん物が溢れるばかり。
それで一念発起してクリーンセンター持ち込み処分を決行。
家の中にあるものを必要なもの不要なものに仕分けるのが
これほどたいへんだとは思ってもみなかった。

使わないかもしれないけど思い出がある。
使わないかもしれないけどちょっと高価だった。
使わないかもしれないけど捨てた途端に必要になるかもしれない。
使わないかもしれないけど持っていたい。

そんな中でどうしても処分できないもの中にフランス人形がある。
私が小学生ぐらいの頃から我が家にあったもの、
昔はよくピアノの上や低い箪笥の上なんかに置かれていた
ガラスケースに入ったお人形。
当時のある日、母と私は高島屋へ出かけ、
ズラリと並んだフランス人形の売り場を右から左から行ったり来たり、
その頃は人形売り場がかなりのスペースを占めていて
段の上に可愛らしいオメメのフランス人形がたくさん飾ってあった。
ロココ風のフリルがいっぱいのドレス、クルクルたてロールの巻き髪。
サテンやビロードの光沢がきれいで、私はこの売り場が好きだった。
母は「今日はこれ買う」と言った。
私は幼心に‘とうとう私のウチにもフランス人形が来る‘と心が踊った。
母は「でもあんまり高いのは買えへんからなぁ、これにしよ、ええお顔してはるわ」と。
ズラリと並んだお人形の一番端っこにあったお人形に決めた。
フリルもなく、たてロールの巻き髪もないごくシンプルなお人形。
ピンクのフリルのドレスを着たお人形を見ながらちょっぴり悲しくなったのを憶えている。
当時の我が家にはそれが精一杯だったのだろう。
でも母はとてもとてもうれしそうな顔をしていた。
そして配達されてきたケースのお人形を箪笥の上に置いた。
天井につかえそうだったけど、朱赤のドレスが蛍光灯のあかりで光っているようだった。
母もきっとフランス人形を家に飾ることが
子どもの頃からの夢だったのだと思う。

今となってはそんな母の胸のうちは想像することしかできないけど
きっとそうだったと思う。
だからこのお人形は置いておきたいと思っている。
by chiromame | 2011-02-17 00:01 | 暮らしいろいろ
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